2026年BalletStudioAXIS 発表会
『くるみ割り人形』(AXIS特別バージョン)
STORY
人間たちを幸せにするお菓子達の、平和な王国がありました。
王様にはお妃のクリスマスケーキの精と、金平糖のプリンセスがいました。
金平糖のプリンセスは、王国を守るくるみ割りの騎士との結婚が決まっていました。
世界中のお菓子やカフェ、ティータイムの主役である王国の住人たちは皆、結婚式を待ちわびていました。
国中の皆が盛大に祝う結婚式の日に、ネズミの大王が軍団を率いて王国に攻め込んできました。
くるみ割りの騎士は皆を守って勇敢に戦いました。
ネズミの大王の剣を奪うと、大王に一太刀浴びせ、ネズミ達を退けました。
しかし敵の剣を使ったせいで呪いがかかり、くるみ割りの騎士は醜い動かぬ人形になってしまいました。
金平糖のプリンセスは大層悲しみ、王国全体が焦げたように苦く重苦しい味しか生み出せなくなってしまいました。
お菓子の国の王様は魔法使いドロッセルマイヤーを呼び、くるみ割りの騎士を元に戻す方法はないか尋ねました。
ドロッセルマイヤーはこの呪いは人間にしか解くことはできないと言いました。
方法はふた通り。
一つは、剣の呪いに負けない勇敢な若者にネズミの大王を倒してもらうこと。
剣を鞘から抜いた時に、剣が輝けば選ばれし者。
そうでないならば、剣に振り回されてしまうらしい。
もう一つの方法は心の純粋な優しい少年または少女が、この変わった風貌の人形を心から大切に思い、この人形のために涙を流してくれること。
ドロッセルマイヤーは王様の頼みで人間の世界に行き、呪いを解く者を探しに行くのでした。
人形になったくるみ割りの騎士を連れて、ドロッセルマイヤーは人形遣いの興行師として何年もさまざまな国を旅して周りました。
それでもなかなか呪いを解く者は現れません。
何度目かのクリスマスイブの夜、ドロッセルマイヤーはシュタルバウムという人の家のクリスマスパーティーに向かうことになりました。
主人のシュタルバウム氏が、自分の子供とパーティーに呼んだ子供達に人形などをプレゼントしてやって欲しいと依頼したからです。
パーティーでは少女達がたくさんいたので、可愛らしいお人形を連れていきました。
魔法で踊らせると少女達は人形に夢中になって、喜んで受け取るのでした。
それを見てシュタルバウム氏の息子のフリッツがプレゼントをねだると、ドロッセルマイヤーはあの剣を差し出しました。
しかし鞘から離れた途端、剣は勝手に暴れだしたので、フリッツは振り回されてしまいました。
ドロッセルマイヤーは剣をしまい、フリッツにはおもちゃのラッパをあげることにしました。
そして今度は、シュタルバウム氏の娘のクララが自分にも人形をくれないかと頼みにきました。
ドロッセルマイヤーはクララに、くるみ割り人形を渡してみることにしました。
今まで見たことがないような変わったお顔をした人形を、クララはすぐに気に入りました。
客間に残してきたくるみ割り人形が気になったクララは、真夜中にこっそりと戻ってきました。
くるみ割り人形を抱いて寝室に戻ろうとしたその時、ドロッセルマイヤーのお人形達が現れて客間を行進していきました。
不思議に思って見送ると、時計の十二時の鐘が鳴り始め、それに合わせてモゾモゾと黒い何かが部屋のあちこちから飛び出してきました。
ネズミです!
ネズミはご馳走を探しに集まってきました。
そしてくるみ割り人形を持ったクララを見つけると、「そいつを渡せ!」と襲ってきました。
クララが囲まれてソファの上に追い詰められてしまったところ、ドロッセルマイヤーが現れ、ネズミ達を追いはらいました。
ドロッセルマイヤーはクララからくるみ割り人形を受け取り、魔法をかけると、くるみ割り人形は大きくなりクララと踊れるほどの背丈にありました。
ドロッセルマイヤーが部屋いっぱいにも魔法をかけると、部屋はどんどん大きくなり、それに合わせてクリスマスツリーがどんどん大きくなっていきました。
すると、ネズミの大王が現れ、くるみ割り人形とクララに襲いかかってきました。
くるみ割り人形はおもちゃの兵隊達を呼び寄せ、それを見たネズミの大王は小さいネズミ達を呼び寄せました。
兵隊とネズミ達、くるみ割り人形とネズミの大王の戦いは激しく、なかなか決着がつきません。
ネズミの大王がくるみ割り人形に鋭い爪で襲いかかると、くるみ割り人形は傷付き倒れてしまいました。
それを見たクララがドロッセルマイヤーに何とか助けられないか尋ねると、ドロッセルマイヤーはフリッツから取り上げたあの剣をクララに渡しました。
クララは勇気を振り絞ってネズミの大王に近付き、剣で思い切り大王の頭を叩きました。
ネズミ達は大王が倒れたことに驚き散り散りに逃げていき、兵隊達はそれを追っていきました。
倒れたくるみ割り人形だけが残され、その身体はもう動かなくなっていました。
くるみ割り人形を助けることができず、クララはとても悲しみ、大粒の涙をいくつもいくつもこぼしました。
すると、どうでしょう
くるみ割り人形がゆっくりと立ち上がり、そしてその顔は美しい青年に戻っていたのです。
呪いが解かれたのです。
くるみ割りの騎士は、クララに感謝を伝え、お菓子の王国へと招待しました。
美しい雪の世界を通り、ドロッセルマイヤーとくるみ割りの騎士、そしてクララは旅立って行きました。
お菓子の王国では、プリンセスがずっと悲しみに暮れていて、国中が暗く、沈んでいました。
ドロッセルマイヤーがくるみ割りの騎士の帰りを知らせると、途端に皆が元気になり、甘く美味しい香りが立ちこめてきました。
くるみ割りの騎士はクララを連れて現れ、皆に呪いを解いた恩人を紹介しました。
するとそこへ、またしてもネズミの大王が現れ、プリンセスを捕らえました。
くるみ割りの騎士はまた勇敢に立ち向かい、ネズミの大王を追い詰めました。
その時、クララがコーヒーの精達と協力してネズミの大王を綿菓子の網でぐるぐると捕らえてしまいました。
動けなくなったネズミの大王を、お菓子の国の王様は牢屋に連れて行くよう命じました。
プリンセスとくるみ割りの騎士はようやく再開を喜ぶことができました。
王様はあらためて結婚式を挙げることを宣言し、皆に踊りを披露するよう言いました。
スペイン風のチョコレートの精
チャイナ風のお茶の精
アラビア風のコーヒーの精
ロシア風のクッキーの精
イタリア風のキャンディーの精
フランス風のマシュマロの精
クリスマスのケーキの精である王妃様とお菓子の国の王様は、シュガーフラワー達と踊り、結婚の許しを得たくるみ割りの騎士と金平糖のプリンセスはクララと踊りました。
全員がこのお祝いを喜んでいると、クララに感謝の証として王様と王妃様からお菓子の国のティアラがプレゼントされました。
少し離れたところにいるドロッセルマイヤーにティアラを見せに行くと、お菓子の王国のみんながだんだん遠ざかって行き、やがて見えなくなってしまいました。
ふと、気づくと、クララは客間のソファにいました。
お部屋は元通りの大きさになり、クリスマスツリーの下のくるみ割り人形がいなくなってしまいました。
夢だったのかと淋しく思うクララでしたが、頭に手をやると、ティアラがちゃんと残っています。
夢のような、本当のお話。
いつかまた、あの王国に行けると信じて、クララの心はキラキラと輝くのでした。
Fin
STORY/畑満美子